来年度(平成29年度)よりスタートする個人所得税の税制改正のうち、現行の医療費控除との選択適用制として導入される医療費控除の特例制度『スイッチOTC薬控除』について説明させていただきます。これにより、現行の医療費控除での医療費控除が受けられない場合においても、スイッチOTC薬控除により医療費控除が受けられる場合も生じると見込まれ、医療費控除が受けやすくなると考えられます。
まず、OTC薬とは、医師に処方してもらう医療用医薬品ではなく、薬局やドラッグストアなどで買える「一般用医薬品(市販薬、Over The Counter Drug)」のことです。このうち、スイッチOTC薬とは、医療用から転用された医薬品のことです。
本制度の導入の背景は、適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、セルフメディケーション(自主服薬)推進を図るためです。
1.対象者
「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人」が対象となります。
具体的には、その年内に医師の関与がある、①特定健康診査、②予防接種、③定期健康診断、④健康診査、⑤がん検診を受けている個人です。
2.適用時期
平成29年1月1日から平成33年12月31日までの各年
3.対象となる医薬品(スイッチOTC医薬品)
対象となる医薬品の薬効の例として、指定された82の成分を含むかぜ薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬、水虫・たむし用薬、肩こり・腰痛・関節痛の貼付薬などである(但し、前記薬効の医薬品の全てが対象となるわけではありません)。
本税制の具体的な対象品目は厚生労働省のホームページに公表されており、平成28年10月8日時点での対象品目数は1,517品目であり、今後も必要に応じて更新される予定です。
インターネットでは、「セルフメディケーション税制対象医薬品 品目一覧(全体版)」と検索ください。
4.所得控除金額
自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品の購入対価の支払合計額が12,000円を超えるときは、その超える部分の金額(金額が88,000円を超える場合には、88,000円)
≪計算式≫ ※最高で88,000円
控除対象医薬品の合計額 - 保険金などで補てんされる金額 - 12,000円
5.本特例措置の具体例
課税所得400万円の者が、対象医薬品を年間80,000円購入した場合(生計を一にする配偶者その他の親族の分も含む)
↓
●所得控除金額:80,000円-12,000円=68,000円
↓
●減税額(所得税):68,000円×20%〈所得税率〉=13,600円
●減税額(住民税):68,000円×10%〈個人住民税率〉=6,800円
6.現行の医療費控除との関係
現行の医療費控除と本特例制度の選択適用制であり、いずれか有利な方を選択して確定申告を行うことになります。
いずれの医療費控除の制度を受けるためにも、医療費の支出を証明する書類の保存が必要となりますのでご留意ください。
以上