平成28年分の年末調整における留意点について

年末調整は、給与の支払を受ける人の一人一人について、毎月(日)の給料や賞与などの支払の際に源泉徴収をした税額と、その年の給与の総額について納めなければならない税額(年税額)とを比べて、その過不足額を精算する手続きです。
平成28年分の年末調整における留意点として主な事項は、年末調整関係書類におけるマイナンバーの記載、通勤手当の非課税限度額の引き上げ、国外居住親族に係る扶養控除等の適用です。
特に、平成28年分の年末調整は、マイナンバー制度が導入されて初めて行われる年末調整となるため、マイナンバーの記載について留意する必要があります。

1.年末調整関係書類に係るマイナンバーの記載
(1)扶養控除等申告書の提出
給与等の支払事務を取り扱う事業者は、年当初又は従業員を採用した時に、従業員等からその従業員及び控除対象配偶者等の個人番号が記載された扶養控除等申告書を受けることになります。
<扶養控除等申告書の提出がない場合>
二か所給与、乙欄の従業員等で扶養控除等申告書の提出がない従業員等における給与所得の源泉徴収票、給与支払報告書についても、その従業員等の個人番号を記載して税務署長、市区町村長に提出します。
<事業者の番号付記>
扶養控除等申告書は、事業者が個人事業者であれば個人番号を、法人であれば法人番号を付記します。
なお、給与支払者の個人番号又は法人番号については、扶養控除等申告書の提出を受けた後に付記しますが、税務署長から扶養控除等申告書の提出を求められるまでの間は、個人番号又は法人番号を付記しなくても差し支えないこととされています。

(2)保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書の提出
事業者は、従業員等が年末調整において保険料控除の適用、配偶者特別控除の適用を受けようとする場合には、従業員等から保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書の提出を受けますが、平成28年4月1日以後は、個人番号の記載は要しないこととなります。
また、給与の支払者が個人の場合には、申告書にマイナンバーの付記は不要ですが、法人の場合には法人番号の付記が必要となります。
年末調整において個人番号の提供を受ける場合には、通常2回目以降の個人番号提供であることから、2回目以降の個人番号の提供については、初回に本人確認の上、特定個人情報ファイルで個人番号及び個人識別事項(氏名及び生年月日又は住所)が一致しているかを確認すれば足りることとなります。

(3)源泉徴収票の作成
平成28年分給与所得の源泉徴収票については、マイナンバー制度の導入等に伴い、用紙サイズがA6からA5に変更されるなど大幅にレイアウト等が変更されています。
個人番号又は法人番号の記載については、税務署提出用には記載するが受給者交付用には記載しないことになります。
※税務署提出用と受給者交付用とでは記載のしかたが異なりますので注意が必要となります。
(4)本人への交付
本人交付用の給与所得の源泉徴収票には、その本人、控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の個人番号は記載しません(支払者の番号も記載不要)。
本人交付用の給与所得の源泉徴収票を所得証明等のために民間事業者に提出する際には、個人番号部分を印刷しないか、復元できない程度にマスキングする等の工夫が必要となります。
支払調書を本人に交付する場合には、個人番号を記載しません。
申告書等の控えに個人番号が記載されている場合で、本人が当該控えを所得証明等のために民間事業者に提出する際には、個人番号部分を復元できない程度にマスキングするなどの工夫が必要となります。

(5)年末調整時の具体的な本人確認
①従業員等の本人確認
事業者が、従業員等から個人番号の提供を受けた時は、番号法に基づく本人確認(番号確認と身元確認)を行います。
従業員等のように事業者と雇用関係にあり、通知カードにより識別される特定の個人と同一の者であることが明らかであると「個人番号利用事務実施者が認める場合」には、事業者は身元確認書類の提示を受けることを省略することができます。ただし、採用時などに番号法や税法で定めるものと同程度の身元(実在)確認書類による確認を行っている必要があります。
②控除対象配偶者等の本人確認
事業者は、扶養控除等申告書の提出により、従業員等からその従業員等の控除対象配偶者等に関する個人番号の提供を受けた場合には、その控除対象配偶者等の本人確認を行う必要はありません。
これは、従業員等が事業者とは別個の「個人番号関係事務実施者」として配偶者等の本人確認を行い、その控除対象配偶者等に関する個人番号を事業者に対して提供することになるためです。
(6)マイナンバー帳簿
扶養控除等申告書には、従業員本人、控除対象配偶者及び控除対象扶養親族等のマイナンバーの記載が必要となります。
しかし、平成29年1月1日以後に支払を受けるべき給与等に係る扶養控除等申告書については、給与支払者が従業員等のマイナンバー等を記載した一定の帳簿(いわゆる『マイナンバー帳簿』)を備えている場合には、その帳簿に記載されている従業員等のマイナンバーの記載は要しないこととなります。
<マイナンバーの記載を要しないこととすることができる申告書>
①給与所得者の扶養控除等申告書
②従たる給与についての扶養控除等申告書
③退職所得の受給に関する申告書
④公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
<マイナンバー帳簿への記載要件>
扶養控除等申告書へのマイナンバーの記載を不要とするために備える帳簿には、次の事項を記載する必要があります。
①扶養控除等申告書に記載されるべき提出者本人、控除対象配偶者、控除対象扶養親族等の氏名、住所、マイナンバー
②帳簿の作成にあたり提出を受けた申告書の名称
③②の申告書の提出年月

2.通勤手当の非課税限度額引き上げ
平成28年1月1日以後に支払われるべき通勤手当の非課税限度額が10万円から15万円に引き上げられました。
しかし、平成28年4月の改正前に支払われた通勤手当については、改正前の非課税規定を適用したところで所得税及び復興特別所得税の源泉徴収が行われていますので、改正後の非課税規定を適用した場合に過誤となる税額は、本年の年末調整の際に精算する必要があります。
なお、すでに支払われた通勤手当が改正前の非課税限度額以下である人には、この精算の手続きは不要です。また、退職した人など本年の年末調整の際に精算する機会のない人については、確定申告により精算することになります。
3.国外居住親族の扶養控除等の適用
平成28年1月1日以後に支払われる給与等の源泉徴収および年末調整において、国外居住親族に係る扶養控除、配偶者控除、障碍者控除または配偶者特別控除の適用を受ける場合には、親族関係書類(親族であることを証明する一定の書類)および送金関係書類(生活費等に充てるために送金等をしたことを明らかにする一定の書類)の提出または提示が必要となりました。

以上

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