任意後見制度について

超高齢化社会である現代において、問題となっているのが「認知症」患者の増加です。核家族化、超少子化、都市集中と地方の過疎、また介護問題とも絡み合っているため、だれもが当事者になる可能性があります。
このような状況に対応するために創設されたのが「成年後見制度」です。認知症である高齢者の財産を管理するなど法律面のサポートや、介護などの生活面のサポートを、成年後見人と呼ばれる代理人が行うことを認める制度です。この成年後見制度のうち、判断能力が十分である元気なうちでも利用できる制度として任意後見制度があります。
そこで、今回は『任意後見制度』についてご説明させていただきます。

1.任意後見制度と法定後見制度について
(1)任意後見制度
任意後見制度とは、将来、自己の判断能力が不十分な常況になった場合に備えて、あらかじめ信頼できる者(任意後見受任者)に対して希望する法律行為によるサポートを委任する制度をいう。

≪任意後見の流れ≫
①任意後見契約の締結(公正証書にて)

②本人の判断能力の低下

③家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申し立て

④任意後見監督人の選任・後見開始
※任意後見監督人は、任意後見人が任意後見契約に沿った後見をきちんと行っているかを監督する人です。弁護士や税理士などが選任されます。

(2)法定後見制度
法定後見制度とは、精神上の障害によりすでに判断能力が不十分な常況にある者を、家庭裁判所が選任した成年後見人等が法律行為によるサポートを行う制度をいう。
後見人の候補者に特に制限はありません。これまでは親族がなることが多かったのですが、最近では弁護士・税理士・社会福祉士などの親族以外の第三者がなることが多くなってきています。

(3)任意後見制度と法定後見制度の違い
■任意後見制度は判断能力が衰える前に信頼できる者を後見人として委任するのに対して、法定後見制度は判断能力が衰えた後に親族などからの申し立てにより家庭裁判所が後見人を選任するという点。
■任意後見制度は委任の範囲を自由に決めることができる制度であるのに対して、法定後見制度は後見・保佐・補助の類型により代理権の範囲が法定されているという点。

2.任意後見制度のメリット
■自分の財産を守ることができる。
■家族、親族同士のトラブルから身を守ることができる。
■日常生活での不自由な面を減らすことができる。
■本人の判断能力が低下する前に委任することができる。
■自分の信頼できる人に後見人を依頼することができる。
■どこまでを後見人に依頼するかを柔軟に決めることができる。

3.任意後見制度でもお手伝いできることの具体例
(1)財産管理に関する法律行為
■不動産などの財産の管理、処分、契約締結
■銀行、郵便局など金融機関からの現金引き出し、振込手続き
■日常生活に必要な賃貸料や光熱費の支払い
■不動産を運用している場合にはその賃借料の受取り
■保険契約の締結や保険料の支払い、保険金の請求、保険金の受取り
■遺産相続、各種行政上の手続きなど

(2)身上監護に関する法律行為
■受診、治療、入院に対する契約締結や費用の支払いなど
■デイサービス、老人ホームへの入退所の介護契約の締結、利用手続き、費用の支払い
■施設や介護サービスにおける処遇の監視と異議申し立てなど

4.任意後見契約と一緒に検討すべき契約
(1)今は元気だが、将来のために備えておきたい
■任意後見契約 + 『見守り契約』

任意後見契約を締結する際、任意後見受任者がいつ後見を開始すればよいか判断できるように、生活と健康状態を
把握するため定期的な訪問・面談を行う見守り契約を一緒に締結し、任意後見を適切に開始するというものである。

(2)認知症ではないが、今すぐに手伝ってほしい
■任意後見契約 + 『財産管理委任契約』

任意後見契約を締結する際、認知症でないうちは委任契約で財産管理を代行してもらうという財産管理委任契約を
一緒に締結し、判断能力が低下したときには任意後見契約に切り替えて任意後見を開始するというものである。

5.最後に
任意後見とは、今は元気でも、将来認知症になってしまったらと不安を感じている人が、元気なうちに認知症などになる前に、自分の一番信頼している人に、財産管理や身上看護など、やってほしいことを決めておくことができる制度です。
任意後見契約は、公証役場において作成される公正証書によることが必要となり、法務局により登記されるため、非常に信用性の高いものとなり、契約の意思も明確となるため、後日のトラブルを防止することに大変適しているものとなります。また、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて任意後見が開始されますので安心です。

任意後見制度に関するご相談などは、弁護士法人フォーラム大阪法律事務所にご連絡ください。

以上

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